令和3年度 ふじ91号所載
子どもは自然
子どもは自然の産物である。だから自然に属するといってもいい。他方、社会、特に都会は人の作ったものである。
現代社会では、この両者の折り合いが悪い。というか、折り合いがついていない。社会の外側では、それが環境問題という形になって表れている。都会が広がっていくために、自然環境が失われていく。社会の中では、子どもや若者にいわばしわ寄せがいっている。わが国では、十代から三十代までの若い人の死因のトップは自殺である。若者には夢も希望もないという事例が多いらしい。「死にたくなったら、ここに電話して」という運動を個人でやっている坂口恭平という人がいる。約二十万件の相談を受けたが、そういう人たちの悩みは要するに「他人が自分をどう思うか」に尽きるらしい。自然はあれこれ言わない。指図もしない。それが失われていくと、子どもたちの生きる場も失われていく。
答は簡単であろう。自然を回復することである。それは外の自然という意味ではない。私たちの心の中の自然を回復することである。何であれ、思い通りにしようと思わないことである。相手をよく観察して、それなりに理解する。子どもは小さな大人ではない。あくまでも子どもという別な存在である。大人である自分と「同じ」にしようと思っても、そうはいかない。